縄張り図の描き方 2015~
◆縄張り図を中心にしたサイトなのに、
”その描き方が書かれていないのは、いかがな物か”と御指摘がありました。
そこで、本ページを作ってみましたが、あくまでも、管理人の描き方です。
35年以上の活動を通し、自分の中では、BESTな方法と思っております。
決して「こうしろ」とか「こうあるべきだ」とは申しません。
あくまでも、ご参考にどうぞ。
◆本ページの目次
1、準備
2、作図(画)
3、浄書
1、準備 | ||
11-1 装備 | ||
城を見るには、当然山へ入らなければなりません。 城跡は綺麗な里山だけにあれば良いのですが、 そうもいきません。 すごい藪の中を探す事も、しょっちゅうです。 山や丘だけでなく、川、湖、沼、海の中にも入らなくてはなりません。 そこで、それなりの道具が必要となるわけです。 |
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基本、軽登山の格好で行きましょう。 【服】 ・色 城跡の所在する山は、普段、人が立ち入らない処がほとんど。 山で怖いのは、獣との遭遇や、ハンターの流れ弾。 とにかく、目立つ格好で行きましょう。 派手になりますが、ピンク、オレンジなど、自然界にあまり無い色を選ぶのが良いと思います。 +私は熊鈴を付けて踏査しています。 ・素材 雨に濡れる事もしばしば。 吸水しない素材を選ぶましょう。 棘のある植物にも良く遭遇するので、藪の中では大体あちこちに体を引っ掛けます。 破れにくい、表面のさらっとした素材がお勧めです。 【足元】 ・ズボン とにかく膝が動きやすい物。 突っ張らない素材 ジーパンは基本NG (かがみ辛いし、私はこれで膝を悪くしました。) ・スパッツ これは優れもの。 ズボンのすそから、伐採した小竹や枝が足に浸入します。 私の長年の悩みは、それが原因で出来る、向こう脛の怪我。 スパッツを装着してからは、全て解消されました。 しかも、靴紐も解けません! ・靴 城跡ではいろいろな物を踏みつける事になります。 伐採後の尖った小竹、枝、雑草、石、岩。 自然の物だけでなく、壊れたガラス瓶、カン。。。 とにかく、靴底の浅いスニーカーなどは禁物。 少々重くなりますが、靴底の厚い登山靴(軽ハイキング用)がBESTだと思います。 |
1-2 追跡戦闘車内部 | ||
私は城グッズを、いつも車に置いています。 毎回、毎回の準備が要らないし、 忘れ物がありません。 |
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追跡戦闘車内には、いつも城グッズを入れておきましょう。 結構、城跡に着いたら、あれがない、これが無いと、あせってしまう事もしばしば。 歳も歳だし、忘れっぽくなっているのも、その理由です。 あと、キャンプ用の折りたたみの椅子も持って行きます。 座りながら、靴を履いたり、着替えたり、一服したり・・・。 結構、重宝しています。 |
1-3 道具 | |||
道具はもちろん、 ご自身の使いやすい物が一番! ここでは、私の愛用グッズを紹介します |
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【スケッチブック】 ・マルマン クロッキーノート S227 縄張り図を描くには、歩測を基本にします。 ノートは方眼(10mm)が入っている物を使っています。 ノートの大きさですが、小さいと大きな城は描きづらいし、 大きいとリュックに入らないし、歩くときに邪魔になる。 いろいろ試しましたが、 最終的には私はB4サイズに落ち着きました。 【鉛筆】 ・消しゴムが伸縮し、たくさん使える物 もちろんシャープペンシルを使います。 中でも消しゴムがたくさん使える物を選んでいます。 消しゴムを単品で持っていると、 無くしたり、消しゴムと鉛筆を持ち替える時間がロスです。 あと、ペン自体を良く落としてしまうのでスペアは忘れずに ・替え芯 替え芯は濃い目の物を使っています。 私は2Bを使ってます。 色の薄い物だと、調査中に体や枝などに擦れて、 折角書いたものが、見えなくなった事があるからです。 【方位磁石】 ・登山用方位磁石 ちょっと値段ははりますが、 登山用のオイルダンパーの磁石を使います。 針の落ち着きやすい、精度の高い物を選びます。 この道具が、正確な縄張り図に近づけるための肝になります。 ケチケチしないで、良いものを買いましょう。 |
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基本筆記道具はこれだけ。 距離は歩測で行います。(以下2,作図を参照) 距離計とか、メジャーなど、複数の道具を使う方もいらっしゃいますが、 藪の中の現地測量では、縄張り図の測量精度はそんなに変わらないと思っています。 所詮、縄張り図は簡易測量図です。 平板などの精密測定器を使った図には、遺構の”測量的な精度”と言うことでは敵いません。 しかし、縄張り図には、精密測量図にもまさる強力な武器があります。 それは、縄張り図は写生する”絵”のようなもので、作成者のイメージが図の中に織り込めるという事。 だから縄張り図作成に最も大切な事は、遺構の精密な測量精度ではなく、 『曲輪の位置関係や広さのバランス。 遺構の構造を捉え、高さ・迫力・現地で見た感じのイメージを、平面でどう伝えるかです。』 だったら、道具は少ないのが一番。 道具に頼らず、人間の五感を磨きましょう。 旅先でも、筆記道具と方位磁石、そして体ひとつあれば事足りるのです。 私は、この作業を始めてから、本当に方向感覚に磨きがかかったような気がします。 |
2、作図(画) 管理人は、縄張り図は『絵』であると思っています。絵図といったほうが正しいのかもしれません。 しかし「縄張り図」という言い方が一般的なようですし、 簡易的な測量もいたしますので、文内では一応「作図」という表現を使っています。 |
2-1 距離の測定 |
胸がわくわくする縄張り図作り。 私はいつも、これを”城攻め”と呼んでいます。 縄張り図を描くときは常に、攻城側の立場で臨みます。 『どうやってこの城を攻めてやろうか・・・』という気持ちで。 描き終わった後は、城方の気持ちになって図を見直します。 こうすると、点のように繋がらなかった遺構が、線となって、縄張りの意図が見えてくる場合があります。 |
【初めの一歩】 縄張り図を描く基本に、距離の測定があります。 いろいろなやり方があります。 簡易測量計を使う人。測量棒を使う人。。。。 私の場合、もっぱら距離測定は歩測です。 いろいろ試しましたが、結局、体一つあればOKと言うところで、落ち着きました。 ですので、 まず自分の歩幅が何センチかを知る事が大事です。 大またで歩く一歩ではなく、あくまでも普通にダラダラ歩ける1歩です。 復歩(右で一歩、左で一歩を1単位とする)で数える方もいらっしゃいますが、 私は単歩(一歩を一単位とする)で距離を測ります。 ちなみに私は単歩=70cmで換算しています。 【方位を決める】 まずスケッチブックの中の、方位を決めます。 『北』の方角を決めます。 必ず、方位を図中に書き込みましょう。 【スケッチブック上の基点】 次に、縄張り図をどこから描き始めるか? できたら、スケッチブックの1ページに全領域を描きあげる事が出来ればBESTです。 すでに、第3者によって図面が作成されていても、されていなくても、 基本は、主郭から描き始めましょう。 縄張り図が旨くスケッチブック内に収まるかは、この主郭を描く位置によって決まってしまうからです。 【主郭の基点を決める】 私の場合、書き始めの基点として、主郭のコーナー部を探します。 遺構の広がりがわかっていれば、広がる方向にスケッチブックの余白を残して書き込める位置に主郭を置きます。。 図面の無い城であれば、あらかじめ城を一巡し、主郭を捕らまえておくのが良いでしょう。 【主郭を描く】 主郭の一辺(コーナーからコーナー)を描いてみましょう。 主郭の縁に沿って、方位磁石の向きを確かめます。 そして、縁に沿って歩きましょう。 歩測で、何歩あるか数えます。 それを図面に書き込めば、一辺の完成です。 【曲線部の描き方】 よく曲輪の縁が曲線を描く城に出くわします。 何度歩いても、歩数が合わず、閉じた曲線なのに開いてしまったり・・・・ 本当に頭に来る事があります。 そういうときのために、曲線は、”直線の集まりだ”と考えましょう。 目印を自分で決めて、そこまで直線的に歩き、あとで曲線で滑らかに結ぶのです。 <事例> 今、本丸の一辺が左のような曲線だったとします。 これを、まともに描くのは至難の業です。 そこで、この曲線を線分に分解してしまいましょう。 具体的には、描き始めの基点から、 どこか次の目標地点を決めて、直線的に歩いてしまいます。 たとえば、Aから周りを眺めたときに B 地点に特徴のある木を見つけたとします。 そうしたら、Bを目指して直線的に歩き、 A-Bを直線で描いてしまいます 次にB地点から眺めたときに、 C地点に綺麗な花を見つけました。 迷わず、Cの花を目指して、直線で歩測します。 これが B-Cになるわけです。 これを繰り返して・・・・・・・・ あとで、現場の状況に合わせて 直線を曲線で結びましょう。 AからEのプロットする点が多ければ多いほど正確な曲線が描けますが、所詮たくさんは無理です。 また、少なければ少ないほど曲線から離れます。 A-B間等の1辺を=約15m以内で取ることをお勧めします。 【最後に全体的なバランスチェック】 上記の作業を繰り返して 左図のような主郭の閉じたラインが描けたとします。 そうしたら、最後に確かめ算をしましょう。 曲輪の、 長辺、短辺 (東西、南北など) を歩測するのです。 曲輪の縁に沿って歩いただけでは、曲輪の形がいびつになっていたり、曲輪のラインが閉じないこともしばしば。 そのような時のリカバリーのためにも、曲輪の全体の長さを測っておくことをお勧めします。 全体バランスと、曲輪の縁の歩測データーの両立が、 紙の上で納得できるまで作業を繰り返し、縄張り図のラインを描いていきます。 |
2-2 図表現(斜面、高さ、崖、曲輪の上下、その他の表現) | ||
さて、何度も申しますが、私は縄張り図は 『絵』 だ、と思っています。 確かに2-1の様に測量は致しますが、この項で申し上げるように、 私の図面の描き方では、「斜面、高さ」という意味で ”測量図とは言えない決定的な矛盾が生じてしまう”からです。 ですから、 私の縄張り調査図は、国土地理院の地形図には絶対合いません。 それを、念頭において頂き、この項は読んでいただきたいと思います。 |
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縄張り図で一番多用されている斜面の表現はケバ方式です。 現在のところ表現方法や、使う記号の決まりはありません。 要は、写生絵と同じで、この城はどんな城なのかを伝える事が一番大切で、法律は無いのです。 最近時は、これをなんとか統一できないか、という事を唱えている方もいらっしゃいます。 縄張り図の表現記号をそろえようとしている方もいらっしゃいます。 ですが、縄張り図は 絵には 「こう描け!」 という決まりは無いですし、 例え、”こう描け!”と誰かが提唱しても、私は”余計なお世話!”と絶対従いません。 ですので、ここに書いてあることは、決して強制は致しませんし、あくまでも、私のお薦めという意味で、読んでください。 |
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【曲輪と斜面の表現方法】 曲輪境界は実線と点線で描きます。 標高の高い曲輪線は、実線で。 斜面を経て、低い曲輪の境界ラインを点線で書きます。 これだけで、曲輪の上下関係がわかります。 斜面は、ケバ線で表現します。 斜面のケバ線を描くときに、注意したいのが、 左図のように、標高の高い方から、低い方へ細くなるように意識しましょう。 図の見た目の迫力が違ってきます。 |
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【測量不能な場所】 さて、早速この本項の核心部に入ります。 そもそも、縄張り図は平面で表現します。 斜面の水平距離も出さなくてはいけません。 測量機を使えばなんとかなる?のでしょうが、 現地調査では、時間の制約もあるでしょうし、お金もかかります。 実質無理です! 測れません。 よって、斜面を図にする場合は、測量ができず、 勘に頼るしか無いということになります・・・・・・・・・・・・・・・① 私が「縄張り図は測量図ではなく”絵”である」 と主張するひとつの由縁です。 斜面の水平距離が測れないのなら、 それよりも縄張り図の表現で大切なのは、 その斜面(切岸)が 「高いのか」「低いのか」 「緩いのか」「きついのか」 を伝える事が大切だと私は思います。 |
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では、ここで例として X城の縄張り図を書いて見ましょう。 【条件】 X城は、 ①曲輪Aと曲輪Bは全く同じ形・面積です。 ②曲輪Aと曲輪Bの間には堀切があり、 切岸Bは切岸Aより倍以上高い とします。 これを、以下のように縄張り図で表現していきます。 |
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図A X城が、完全測量図(例えば地理院の地形図) で描かれたとすると図Aの様になります。 曲輪Bのほうが、壁(切岸)が高いので、 等高線が密になっていることがわかります。 |
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図B これを単純に、ケバ方式の縄張り図にすると、 こうなります。 あれれ!!? なんか堀切を挟む 曲輪AとBの切岸ケバ線が 同じ長さになっちゃう。 これですと、 AとBのどちらが高いか わかりません。 |
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図C そこで、曲輪B斜面のケバ線の長さを変えてみましょう。 高い壁は長く、低い壁は短く。 また、ケバ線を上下に重ねて見ることも有効です。 だいぶ、雰囲気が出てきたと思いませんか! Aより、Bの方が高く見えるようになりました。 ところが、あれれ!!? 大変なことが起こりました。 浄書しようと、地形図の上に載せてみると、 あら、ビックリ!! ぜんぜん、 縄張り図と地形図の距離が合いません!! 当たり前ですよね、 B斜面ケバ線をより長く描いたんだから・・ |
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図D じゃあ、どうしましょう。 そうだ! 図の大きさを地形図に合わせちゃいましょう。 あれれ!! これだと、せっかく 実測した曲輪の大きさが小さくなっちゃいます。 スケールや、周りの家も小さくなっちゃいました。 唯一計測した曲輪の一辺の長さや大きさが変わるのは、 全く残念なことです。 ですので、このやり方も私は嫌いです。 |
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このように、縄張り図に迫力や、高さ感を意識すると、 実際の地形図上の等高線・道路の幅・建物の大きさには合わなくなってきます。 つまり、ケバで高さ感のイメージを表す限り、地形図との距離は一致しないのです・・・・・・・・② 以上、 ①現地調査において、斜面高さは、勘に頼るしかない ②ケバの長さで高さ・迫力を表現する ①②がある限り、縄張り図は測量図には成り得ないわけです。 わたしが、縄張り図を「絵」とする”こだわり”の理由を、わかっていただけたでしょうか? 上記より、縄張り図を無理に地形図に合わせたり、地形図の等高線にこだわる必要は無いと思います。 実際、地形図には、現地で見た細かな尾根や谷が表現されていない場合も多いのです。 そもそも、縄張り図に皆さんは何を期待するのでしょうか? 測量の精密さでしょうか? いえいえ、きっと違います。 私でしたら、この城がどんな構造なのか?パッと見て分かることだと思うのです。 距離感は、概ね現地と合っていれば、誰も文句は言わないと思うのです。 何度も言うように、縄張り図で一番大切なのは、 城の『曲輪の位置関係や広さのバランス。 遺構の構造を捉え、高さ・迫力・現地で見た感じのイメージを、平面でどう伝えるのか。』 ちなみに私の場合、上記のようなケースでは現地縄張り図を正としています。 等高線は、現地のイメージとして、乗せるようにしています。 やむなく地形図を参考にする時は、現地図に合うように地形図(等高線など)を加工し、浄書します。 |
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【斜面の細かな表現】ゆるいか、きついか | ||
さて、では縄張り図を描くときの私の一定のルールについてお話しましょう。 きつい、高い斜面の描き方 非常に主観的なのですが、 まず、斜面のきついところはケバを密にするといいでしょう。 図のようにケバの密度で、随分雰囲気が違うと思う。 ケバを上下に重ねることも、斜面をきつく、高く見せる効果があります。 ケバを長く書く事も斜面を高く見せる効果があるが、あまり長いと図面がみっともなく見えます。 このような時は、迷わずケバを重ねましょう。 緩い斜面 きつい斜面と逆で、ケバの密度を粗くしましょう。 また、同時にケバの長さも短くします。 ケバの密度が粗くても、ケバ自身の長さが長いと、緩急がわかりません。 だらっとした斜面を描くには、ケバを短く、隙間を空けて描く事をお勧めします。 |
以下は